大学は経済学部に所属していたのですが、大学4年時から並行してファッションスクールに通い始めました。そのスクールを卒業後、デザイナーズブランドの会社に入社し、13年間、デザイナーとして企画全般を担当。ナガイレーベンはその会社とライセンス契約をしており、僕はその担当者でした。当時のナガイレーベンのデザイナーの方が退職されるタイミングで入社することになりました。
メインは新商品開発です。機能のデータ的な部分は商品管理室、見た目や質感、色は僕が所属する商品企画室と2つの部署で連携して、企画に合わせた商品を開発しています。素材から開発することもありますね。
そのほか、病院オリジナルウェアのデザインや営業との販促活動、コンペの際のプレゼン参加などを担っています。
僕が入社した2010年ごろは、白いメディカルウェアがメインでした。いまはカラーのものが多いですね。形も当時はワンピース型が多く、パンツと組み合わせるトップスは襟付きでしたが、いまはスクラブというVネックの半袖トップスに変わっています。
当社は業界シェアNO.1なので、当社が開発した商品がトレンドになる傾向が多いです。そのため、当社が現場の声から新商品を企画してトレンドをつくる、という流れですね。
例えばスクラブは、以前は頭から被って着用するプルオーバータイプしかありませんでした。しかし、実際に着用する医療現場の女性から「髪型が崩れる」「メイクがウェアにつく」、年齢層が上の人からは「被って着るのが大変」という声を聞いたのです。
そうしたニーズに応えて開発したのがファスナータイプで、いまはそれが主流になりました。
前職ではパリコレに参加しているブランドのファッションデザインをやっていました。当時デザインしていたものはデザイン性が強く値段も高価だったため街で着ている人を見かける機会はほとんどありませんでした。
それに対していまデザインしているメディカルウェアは、医療現場で働く人たちや患者さんが着る実用的なものです。実際に病院に行き、皆さんが着てくれているのを見て「快適」「着やすい」などといった感想を聞くと、自分がつくったものが人の役に立っているのだと実感できて、大きなやりがいを感じます。
メディカルウェアは商品を開発する上での制約が非常に多いので、その中でいかに独自性を出すかという思考が身につきました。「格好いい」「かわいい」などの審美性を大事にしながらも、高温で乾かす、お湯で洗うなどハードな運用の中で着られることを前提にデザインを考えていくのは、前職とは全く違う思考を求められて難しいけれど面白いです。
着用者の尊厳が守られるデザインにすることです。
例えば医療従事者であれば、その人がきちんとしているように見えなければ、治療を受ける患者さんはきっと安心できないでしょう。そのため、洗濯しても型崩れしないようなデザインのメディカルウェアにすることで、医療従事者の尊厳を守れるようにしています。
患者さんの場合は、着ている患者衣がヨレヨレしていたら、患者さんが余計に弱々しく見えてしまうかもしれません。患者さんが少しでも元気に見えるようなデザインや質感にすることで、患者さんの尊厳を守っています。
そうすることで着る人の気持ちをポジティブにすることができ、見る人は安心できるのではないでしょうか。
愚直にちゃんとしたものをつくる会社。自社工場もあって、1から自分たちの手でものづくりをすることで、世の中の役に立っていることを実感しながら仕事ができます。
お客様に対しても、社内の人に対しても誠実に接することができる人です。相手のことを思いやって真摯に向き合い、コミュニケーションを取れる人が向いていると思います。
当社は皆さん優しくて、誰かがミスをしても、それを責めるのではなくみんなでカバーし合う風土があります。その風土を一緒に守っていける人だと良いですね。
お客様が満足する商品を作り続けていきたいです。医療従事者の皆さんが働きやすいもの、患者さんがより快適に入院期間を過ごせるものを追求していきたいと思っています。
会社目線で言えばシェアをもっと伸ばしたいという目標もありますが、それはいまより少しでも良いものをつくるというものづくりを続けていけば、自ずとその目標は実現できるでしょう。なのでまずは目の前のものづくりを、より高いレベルに押し上げていきたいですね。
学生のみなさんへ
人は皆、それぞれ潜在的な能力が備わっていると思います。それが何なのかがわかる体験ができると、きっと将来の道標になるはずです。そのために必ずしも特別な体験をする必要はなく、きっと日常の中やふとしたきっかけで自分の能力に気づけますよ。
僕はもともと経済学部の学生で、自分に服をつくる能力があるとは全く思っていませんでした。けれど就職する前に何かほかの人と差をつけたいと思ってファッションスクールに通ってみたら、自分の能力に気づいたのです。もし自分にものづくりの能力があると気づかなければ、全く違う人生だったでしょう。
何が能力に気づくきっかけになるかは人によりますが、「好き」というのはわかりやすい成功体験で、大きなヒントになると思います。なので自分の能力が何かがわからない人は、まず自分は何が好きか、どういうことをしたいのかというところから考えてみると良いかもしれませんね。
その先であなたが自分の能力に気づき、熱中できる仕事に出会えることを祈っています。