サトウハチロー詩集
いのちの力になりたい20 サトウハチロー 詩集
心寂しい、もの悲しい、ちょっと心が難しいときに、
ふと子どもの頃の歌を口ずさむことがあります。
記憶の底に沈んでいたはずなのに、人生の折々に、
まるで言葉のくすりのように唇から胸の奥に届く。
サトウハチローが生み出した素朴な詩は、
そんな心の芯をあたためる、いのちの力を宿しています。
「誰にも知れないやうに
お風呂場の壁がぬれて行きます」(爪色の雨)
父への反発で腕白を極めながらも、サトウハチローの視線は、
ささやかなもの、小さなものに向けられました。
繊細な詩の感性を開花させたのは、
小さい頃、病弱であった自分に寄り添ってくれた母への思い。
そして自らも母も小さい存在として、あたたかく見つめます。
「ちいさい ちいさい人でした
ほんとうに ちいさい母でした
それより ちいさいボクでした
おっぱいのんでる ボクでした
かいぐり かいぐり とっとのめ
おつむてんてん いないないバア」(ちいさい母のうた)
やがて消えゆく母と子のかけがえのない関係をも、
感謝と懺悔、そして愛の賛歌としてハチローはうたうのです。だからでしょうか。
時を超えて、わたしたちの心の奥底に、こんなにも響くのでしょうか。