2019尾崎放哉 詩集
いのちの力になりたい 14 尾崎放哉 詩集
令和の時代が幕を開けました。
新年号となって初めての詩集となる今回は、今も多くの文士が天才と憧れ、
その洒脱な表現力を羨む、尾崎放哉を取り上げました。
放哉は、山頭火と並び称される傑出した自由律の俳人です。
才能を開花させた、定型に縛られないリズムは、
東京帝国大学を卒業し、一流企業で役職を得た放哉が
社会的に見れば、転落してゆく時期に芽吹いています。
晩年、小豆島に小さな庵を構えて生まれた名句
咳をしても一人
は、皆さんも、耳にしたことがあるかもしれません。
社会も、家族も、温厚な市井の人であることすらも
身にそぐわなかった放哉が、
唯一、親和した世界は話し相手もない孤独でした。
けれど、たった九音で切り取られた孤独の先には
私たちの頬を緩ませる、生のおかしみが、やさしさが香ります。
わたしたちは放哉を、孤高の天才として紹介したいのではありません。
放哉が見いだした自由が、新しい時代を駆けるナースに胸に、
やさしい風を吹き込んでくれるよう願うのです。
ひとも自然も、動物も、子どもも、この一瞬を分かち合う
死にゆくいのちとして等しく見つめた、放哉のおおらかさ。
放哉もまた、あなたのように、生の自由を育み続けた
いのちへの奉仕者であったと、わたしたちは、そう思うのです。