詩集
いのちの力になりたい 15 萩原朔太郎詩集
2020萩原朔太郎詩集

いのちの力になりたい 15 萩原朔太郎詩集

萩原朔太郎は、時空を超える自由なインスピレーションと情感の表現力で、詩壇では絶賛されました。しかし、その過敏で繊細な気質は、あまりにも社会生活に不向きでした。
名医と謳われた開業医の父と、伝統を守る母に、跡継ぎとして大切に育てられますが、
学友から疎外されて入退学を繰り返し、学業では挫折します。
朔太郎の人生を詩に重ねるとき、美しい作風の根底に、自分の存在意義を感じられないがゆえの、苦しみが沈んでいるように思えます。非現実的な「変化」と「幻想の世界」を紡ぎ出すことから悲哀の詩人と評されることもあります。しかし、そうなのでしょうか。
感覚に鋭く刻まれた、無数の暗い記憶。その残像は、流れる水に、月光に、かすみの空に
愛おしく包まれて、景色の中にやさしく消えてゆき、朔太郎を満たします。
そこには、生きたリズムがあります。描き出した詩空間は、いのちの本質と触れ合い、
愛を交わすことができる、たったひとつの現実だったのかもしれません。
繊細な色を、音を、微かな気配を、すべて受け止めた、こころ優しいこの詩人は、
詩を書く人というよりも、ただ正直にいのちを愛したいと、自分の詩とひとつとなって
生を全うした、詩を「生きた」人だったのではないでしょうか。

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